大判例

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東京高等裁判所 昭和41年(行ケ)128号 判決

一 特許庁における本件審査、抗告審判手続の経緯、本願実用新案の要旨および本件審決の理由についての請求原因第一項ないし第三項の事実は、すべて、当事者間に争いがない。

本件審決引用の本件証明書(甲第六号証の一の二、同号証の二の六、同号証の三の二中の各証明書および乙第四号証)について、その成立および証拠力につき争いがあるので、以下この点について考察する。

二 本件証明書は、山根電器産業株式会社より、添附説明書および図面記載の構造の密封蛍光灯器具(防水ロケツト)が、昭和三四年二月三日以前に、蛍光灯製造業者間において、多数製造販売されており、公知公用に属していたことの証明方を求めたのに対し、昭和三六年一〇月二日付大阪市東区南久太郎一丁目六五番地関西蛍光灯工業会理事長田中寿雄名義で、「上記の通り相違無き事を証明す」とされた形式のものであることが、書面の記載自体より明らかである。すなわち、右文書は、記載の形式によれば、関西蛍光灯工業会理事長田中寿雄名義の文書である。右証明書の日付の当時田中寿雄が同工業会の理事長として、これを代表し、会務を総理する権限を有していたこと、本件証明書中、右作成名義人を表示した部分における「関西蛍光灯工業会」および「理事長田中寿雄」名下の各印影が、それぞれ本人または権限ある代理人により押捺されたものであるか否かの点は別として、印影そのものは真正であることは、原告の自認するところである。本件証明書にこのような印影が顕出されるに至つた事情については、これを明らかにすることのできる資料が全くない。

印章の取扱保管が一般に特段の注意をもつて行われている取引界の実情に照らすときは、右のように印影が真正である以上、特段の事情の認め難い本件では、それは、印影に表示された者の意思にもとづいて押されることにより、適法に顕出されたものと推認すべく、そのような捺印があるときは、民事訴訟法第三二六条により文書そのものも真正なものと推定され、この推定をくつがえすに足りる資料は、本件においては存在しない。原告は、右工業会における議決の有無に関して主張するところがあるが、右文書記載のような証明をすることは、常務として理事長がその一般的地位権限にもとづき行うことができるのが通常であり、本件においても、このような事項についてまで議決を要するものとすべき特段の事由は認め難いから、右主張は理由がない。したがつて、本件証明書は、関西蛍光灯工業会の文書としての成立が認められるものである。

つぎに、原告は、本件証明書の証拠価値を争い、引用例の密封蛍光灯(防水ロケツト)の製造販売の日時が単に本願実用新案登録出願日以前というだけでは、時点が不明確であり、かつ、本件証明書の証明形式からいつても、これを証拠とするに不十分である旨主張する。しかしながら、本件において、これをその立証事項との関連においてみるときは、原告主張のとおり特定の時点を明確にすることまでは必ずしも必要でないばかりでなく、特定の日以前に製造販売されていたことだけは判るという場合もあり、その限度で控え目に事実の証明を得ることも、あながち不自然ではない。なるほど、この種証明書については、原告主張のとおり、ことに、証明内容、方式等すべてにおいて慎重、正確を期すべきことは当然であり、形式的に堕してはならないこというまでもないが、本件においては、立証の経緯その他弁論の全趣旨に徴し、これら諸点につき証拠を検討しても、本件証明書の記載内容の真実性を疑わせるような特段の事由は認め難いから、原告の右主張は、採用できない。そして、本件証明書および弁論の全趣旨によれば、引用例の密封蛍光灯が、本願実用新案登録出願の日(昭和三四年二月三日)以前に、蛍光灯業者により関西地区において一般に製造販売されていたことが推認できる。

ところで、本願実用新案の密封蛍光灯が引用例の密封蛍光灯と構造において一致することについては、当事者間に争いがなく、その作用効果の差異については当事者も主張しないところであるから、本願実用新案は、旧実用新案法第三条第一号の規定にかかる登録要件を欠くものとせざるをえない。

三 右のとおりである以上、本件審決には原告主張のような違法の点は認められず、その取消を求める原告の本訴請求は、理由がないから、これを失当として棄却することとする。

〔編註〕 本件に関する図面は左のとおりである。

本願実用新案「密封蛍光灯」の一部切欠

縦断側面図および拡大横断正面図

<省略>

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